臨済宗・国泰寺・稲葉心田管長

正確ではないが、お会いしたのは25年程前である

自営の道を歩み始めて数年経った頃のことである。

あらゆる面で行き詰まりを感じ、藁でもすがる思いで国泰寺の門を叩いた

おりしも2月大寒の「接心」?!一年で一番の荒行の時期であった!

3時家を出て、山門で雪の中に顔を埋め全身に気合を入れそして広間に上がる、最初大

広間で30分読経する

素足で畳を歩くと、氷の上を歩くようで、足の感覚が無くなった

そして禅堂に入り2時間の座禅!

線香1本が30分で計4本、一本燃え尽きると拍子木が鳴った、

心に雑念があると即刻逃げ出したいほどの時間の長さを覚えた

座禅が終わると、堂内の雑巾かけ、雑巾を絞る真冬の井戸水がお湯のように温かかった

骨の髄まで冷えるとは、あの事である、

一週間通った、若かったが参った。

稲葉管長と向かい合っての食事、しかし声をかける空気は全く無い、

黙ってモクモク食べて退席する、

何日目か管長が東京へ講演に行かれるのを、玄関まで見送りに出た

玄関に腰掛、草鞋を履くその後姿に、一分のスキも無かった!

心の刃で切り込んだ私が金縛りに合った!

まるで後ろに目があるようで、背中が大きく見えた!

脅威の体験、凄い人が世の中にいる!

話しかけることすら恐れ多い、

結局一言もお言葉を戴かなかったが、25年経った今も管長から一番大切な何か、無言のお

言葉を賜ったような、不思議な思いに浸る!

昭和61年没、享年79才・黙祷

                                           
          
                 平成17 63