雨の朝

 

鴨長明の方丈記に「ゆく川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず、淀みに浮ぶ・・・・」

とか何とかとあった

雨音に気づき、ふと窓の外を見ると、小雨が川面に絶え間なく、水の輪を落としている

そして、川面に浮いた、小さな浮遊物が、緩慢な流れを告げる

この広い地球上に浮ぶ日本の北陸の一隅の、この事務所二階の見慣れた湊川の景色を見や

りながら毎朝飽きもせず下手な原稿を叩いている

こんなことをしている自分にふと、自分はどこへ行こうとしているのか、何をしているの

か、と自問し戸惑うことがある

はかない水輪の如く、自問が次から次と波紋を広げては、消えてゆく

つい先月まで、あれほど誇っていた桜が、すっかり若葉で緑に装いを変えた

梅雨入りであろうか?

風が出てきて、自社の旗がパタパタとはためく、

今日は確か向かいの市民会館に氷見市宝生会による能舞いが演じられる筈である

またまた、ギリシャの経済危機による世界同時株安、北朝鮮による韓国哨戒艇撃沈事件の

問題、イラン核開発のタイム期限など、どれをとっても、深刻である

それよりも、何よりも、家業の行方は切実である

水に漂う浮き草より、危うい、明日をも知れない時代である

現実が情緒を奪い詩的な世界を阻む

川底の汚泥は刻々その姿を変えている

せめて今日一日、「藤」の能舞いを見て、幽玄の世界に逃避でもするかと、小雨の川面を、

見るとはなしに、虚ろに眺めている

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今日もかくてありなむ、であろう

諸行無常

川の流れである

アァ・無情

あなかしこ、あなかしこ

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である

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平成2257日・朝8時半